タバブックスの「シリーズ3/4」
ネットで調べものをしていて、タバブックスという出版社を知った。ラインナップを見たら面白そうだったので、「シリーズ3/4」と名付けられたシリーズの4冊を読んでみた。
3/4くらいの文量、サイズ、重さの本。
3/4くらいの身軽さ、ゆとり、
余白のある生き方をさがす人へ。
と説明されている。
1冊目は『バイトやめる学校』山下陽光(ひかる)。
著者は1977年生まれ。古着をリメイクしてオンラインで販売している。本書の内容をざっくり言うと「好きなことを仕事にして自活しよう」。スマホを「バイトやめる装置」として、社会から需要がある自分の特技で仕事を生み出し、最終的にはバイトをやめる。自分は生活できる程度のお金をもらい、人を雇えるようになったら高い賃金を払う。著者いわく「反資本主義」のノウハウが実例とともに書かれている。
いろいろ理由をつけて二の足を踏みがちなところ、とにかく行動してみる、失敗しながら考える、という姿勢がたくましい。冒頭で読者に「心配すんな」って言ってます(笑)。
2冊目は『あたらしい無職』丹野未雪。
著者は1975年生まれ。編集者&ライターで、おもに非正規雇用で出版業界を転々としている。文章がとても上手で、優秀な方なんだろうなあと推察。働き方は多少違うけれど、職業を同じくする者として深く共感した。悩み、もがき、ささやかな喜びや楽しみを見つけながら日々を過ごす姿は身につまされる。いや〜ホントに景気わるいですよね。お互いがんばりましょう!
3冊目は『田舎の未来』さのかずや。
タバブックスが発行する雑誌『仕事文脈』の連載をまとめたもの。著者は1991年北海道生まれ。父親がうつ病で仕事を辞めて以来、田舎でどんな仕事ができるかを考え、実践してきた7年間の記録である。大学生、会社員、フリーランサーと、そのときどきの立場でできることを探り、実行に移す行動力が素晴らしい。この人も生活力ありそうだなあ。
タバブックスのFacebookページをフォローしたら、本書の読書会の告知があって、会場が下北沢で家から近いし、なんとなくなりゆきで参加してみた。参加者のみなさんは推定20代前半で、ちょっと場違いだったかなあ…と思ったけれど、意外とフツーに話ができた。
悩みは違っても、今の世の中でなかなか気楽に生きられないのは、20代も50代もそれほど差はないのではないか。世代を超えて一緒に考え、なんとか生き抜いていかなければ。そんなことを考えた。
4冊目は『女と仕事』仕事文脈編集部。
雑誌『仕事文脈』に掲載された寄稿からのセレクション。表紙がかわいいーー。書き手はすべて女性で、20代〜30代が多い。私が名前を知っていたのは、ライターの雨宮まみさん、写真家の植本一子さん、前述の(2冊目の著者の)丹野未雪さんぐらいだった。そういった一部の執筆者を除けば無名の、書き手としても素人の女性たちが、自分の仕事にまつわるさまざまなことを表現するために、真剣に言葉を選んでいる。
裏表紙には「ふつうに仕事をしていくのが難しすぎる。小さいけど深くてモヤモヤする、女と仕事の話いろいろ。」とある。体裁を取り繕ったりせず、その人のその時のありのままが書かれ、それぞれの文章に結論らしきものはなく、ある意味その不完全さから彼女たちのリアリティが伝わってくる。
4冊とも働き方がテーマになっていて、自由でありたい人たちの試行錯誤による、多様な働き方のサンプルが並んでいる。けれども、(1冊目を除けば)「こうすればうまくいく」的なことは何も書かれていない。本の作り手も無理矢理まとめたりはしていない。それってなかなかできることではないと思う。今後も楽しみにしています。
■『バイトやめる学校』
山下陽光著(タバブックス)
■『あたらしい無職』
丹野未雪著(タバブックス)
■『田舎の未来』
さのかずや著(タバブックス)
■『女と仕事 「仕事文脈」セレクション』
仕事文脈編集部編(タバブックス)
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