『ひどい感じ 父・井上光晴』井上荒野
本ときどき映画
『あちらにいる鬼』で井上一家のことを知りたくなり、2002年に出版された本書を読んでみた。
父・井上光晴は嘘つきで、出生地も家族に嘘をついていたこと。
父が出かけると必ず翌朝まで帰ってこなかったこと。
主に女性関係について父がつく嘘を、家族は“そういうことにしておこう”と黙認していたこと。
父の食への執着と酒飲みの血筋によって、母は「料理の鉄人」となり、家族4人で昼食から酒を飲み、夕食は2時間もかけて食べてしゃべっていたこと。(これはちょっとうらやましい。)
井上家には墓がなかったため、父の遺骨を7年間も母のクローゼットに置いていたこと。
その遺骨を瀬戸内寂聴さんの縁で岩手県浄法寺町の墓地に収めたこと。
変わっているなあ、と思う。
でも、平々凡々だと思ってきた我が家族も、このように客観的な視点で語られることがあれば、変わって見えるのかもしれないなあ、と鏡を覗くような気持ちにもなる。
荒野さんは本名で、小さい頃から名前のせいで男の子に間違えられたりしたそうだが、「この名前の最大の弊害は『平凡な人生が似合わない』ということだろう」と書いている。これもちょっとうらやましい。
■『ひどい感じ 父・井上光晴』
井上荒野 著(講談社)
この記事へのコメントはありません。