『BUTTER』柚木麻子
本ときどき映画
主人公は週刊誌の記者、町田里佳。女性初のデスクとの呼び声も高いが、家族、恋人、友人との関係に頭を悩ませてもいる33歳。複数の男性を殺した容疑で無期懲役の判決を受けている梶井真奈子を取材するうちに、その魅力(というか魔力?)に絡めとられていくストーリーだ。
梶井真奈子は美人ではなく、体型もぽっちゃりしている設定で、そういえばこういう事件あったなあ…と思いながら読み終え、参考文献を眺めてやっと、梶井真奈子のモデルが木嶋佳苗死刑囚だと気づいた。
木嶋佳苗で検索すると、2007年〜2009年に発生した「首都圏連続不審死事件」としていくつもの記事が出てくる。そういえば、デブでブスのくせに男にモテる…みたいな論調で騒がれていたなあ。
小説のほうはというと、町田里佳と梶井真奈子の東京拘置所での面会シーンがよかった。面会を重ねるごとに二人の関係性が変化し、緊張感が増していき、展開が予測不可能でドキドキする。
こういう食うか食われるかのバトルをもっと読みたかったし、なんなら主人公が狂気に落ちていくようなホラーを期待していたのに、なんだか普通のオチになってしまって残念。でも、読み手によって感想は分かれるだろう。
現実の木嶋佳苗死刑囚は、本書が発行された翌年の2018年に、なんと週刊新潮のデスクと獄中結婚したらしい。あと、自身のブログで本書の内容について激怒しているらしい。事実は小説より奇なり。
■『BUTTER』
柚木麻子(新潮文庫)
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