『美は乱調にあり 〜伊藤野枝と大杉栄〜』瀬戸内寂聴

本イメージ
本ときどき映画

半世紀以上前の1965年に執筆され、
2017年1月に改めて
岩波現代文庫に収められた伊藤野枝伝。

 

そのまえがきで当時94歳の著者は
「四百冊を超えているらしい自作の中で、
ぜひ今も読んでもらいたい本」に本書と
続編の『諧調は偽りなり』を挙げている。

まえがきの結びにはこうある。
「この小説を書いて、
『青春は恋と革命だ』という考えが
私のうちにしっかりと根を下した」

 

寂聴さん、かっこいい!
まさにその言葉どおり、
激しくなまなましい人間が
全編を通して描かれている。

 

大正時代を代表するダダイストの辻潤と
アナーキストで社会主義者の大杉栄。
著者が言うところの“怪物二人”と結婚し
合わせて7人の子どもを産んだ伊藤野枝は、
関東大震災のどさくさに紛れて
38歳の大杉栄と6歳の甥とともに
甘粕正彦が率いる憲兵隊に虐殺された。
28年の短い生涯だった。

本書には主役の2人だけでなく、
平塚らいてう、神近市子、尾竹紅吉ら
当時の世間を賑わせた“新しい女”たちが登場し、
ぬるい現代からは想像もできない
情熱ほとばしる言動にはっとさせられる。

 

本書を読むきっかけになったのは
政治学者である栗原康さんの
『村に火をつけ、白痴になれ 〜伊藤野枝伝〜』。
こちらもおすすめです。

 

■『美は乱調にあり 〜伊藤野枝と大杉栄〜』
瀬戸内寂聴 著(岩波現代文庫)

amazon.co.jpで見る

 

■『村に火をつけ、白痴になれ 〜伊藤野枝伝〜』
栗原康 著(岩波書店)

『村に火をつけ、白痴になれ』書影

amazon.co.jpで見る

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。

さとまる

トラベルライター&エディター。
1965年生まれ、東京在住。
出版社勤務ののち独立して、Sawa-Sawaの屋号で旅行メディアの仕事をしています。

旅行はいつどこへ誰と行っても楽しく、弾丸よりも長く行きたい派。とくに東南アジアや沖縄の高温多湿な気候とボーダーレスな雰囲気が好きです。温泉&ビール付き日帰りハイキングもお気に入り。

2019年4月にブログをリニューアルしました。ときどき覗いてみてくださいね。
about