『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』小川たまか
本ときどき映画
ずいぶん前に図書館で予約していた本が、忘れた頃に回ってきた。
あれっ?どこかで読んだような文章……と思ったら、ちょうどその日に読んだウェブ記事のライターさんが著者であった。
幻冬舎の編集者、箕輪厚介氏のセクハラについて検索していたら行き当たった記事だ。
下請けに性的関係を迫らないでほしいという簡単なお話(Yahoo!ニュース個人)
著者はおもに性暴力被害を取材しているライターさんで、Yahoo!ニュース個人やnoteで執筆されている。
本書には、一度ならず報道され、誰でも知っているような性暴力事件も書かれているが、著者の視点はむしろその背後に広がる日常的な性暴力に向けられている。
痴漢常習者の心理が解説されたくだりはとてもわかりやすく、女性だけでなく男性にもぜひ読んでほしい。
世界経済フォーラムによるジェンダー・ギャップ指数2020(2019年12月公表)で、日本は153カ国中121位と、これまでの最下位を記録した。
ところが、その絶望的な数字は報道されても、問題解決のための分析はいっこうに深まらない。
なぜ分析されないのか。なぜ有効な施策がとられないのか。
日本で性暴力について考え始めると、家庭でも職場でも日常生活に支障をきたすから、たいていの人はその深い闇に蓋をしてしまうのだろう。私も間違いなくそのひとりだ。
「セクハラ」という便利だけれど薄っぺらい言葉で片づけてはいけない、と改めて思う。
■『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』
小川たまか(タバブックス)
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