『戦争にチャンスを与えよ』エドワード・ルトワック
本ときどき映画
- 「奥山真司の地政学『アメリカ通信』」というYouTubeの生放送をたまに見ている。アメリカを中心とする世界情勢を解説する番組で、マスメディアが取り上げない情報あり、ラディカルなコメントありで面白い。先週はG20の会議場が貧相だという話から始まり(長机とパイプ椅子みたいな)、私もそう思っていたので深くうなづいた。
地政学=Geopoliticsとは、国家がおかれた地理的条件から、その国家の政治や経済(や歴史や宗教やもろもろ)を包括的に研究する学問らしい。そして実践的には、その国家がどのような行動をとるかを予測し、どのように対峙するかの戦略を立てるものらしい。検索するといろいろな定義があるようなので、違っていたらすみません。
前置きが長くなったけれど、その地政学者の奥山真司氏が、戦略家のスペシャリストであるエドワード・ルトワック氏にインタビューしてまとめたのが本書。2017年4月に出版された当時、過激なタイトルが話題になった記憶がある。
「戦争にチャンスを与えよ」は1999年にルトワック氏が書いた論文のタイトルで、本書にも全文が収録されている。国連やNGOや他国による「人道介入」は、戦争を終わらせるのではなく、かえって戦争を長引かせている。当事者同士が疲弊するまで戦わなければ平和は訪れない。とルトワック氏は言う。
「戦争は起こるもの」という前提で語られているので、「戦争反対!ラブ&ピース」などとぼんやりしている身には、受け入れがたい部分もあり、水を浴びせられて目を覚ますみたいな部分もあり。一方で「戦争は可能な限り避けよ」も本書の大前提になっていて、ルトワック氏の学者らしい冷静な語り口は説得力がある。
日米安全保障に日韓関係、尖閣諸島、北方領土…。日本が次々と直面する外交問題にどう対処すればよいのか、戦争を避けるための戦略を科学的に知ることが重要であると理解した。何もしないのが最悪だそうです。そりゃそうだ。
■『戦争にチャンスを与えよ』
エドワード・ルトワック 著、奥山真司 訳(文春新書)
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