『ハリネズミの願い』トーン・テレヘン
本ときどき映画
表紙をひと目見て
ぎゃあぁかわいい! と手にとり、
最初の1ページを読んだら
ますますかわいくて連れ帰った本。
ひとりぼっちのハリネズミは
どうぶつたちを招待しようと
手紙を書きはじめる。なのに、
「でも、だれも来なくてもだいじょうぶです」
と書き足して手紙を引き出しにしまう。
ハリネズミは想像してしまうのだ。
ダチョウが来たら
家のあちこちに頭をつっこまれ、
ラクダはこぶをはずして
ハリネズミのハリに刺して帰り、
ロブスターには鋭いハサミで
ハリを抜かれて涙目になる場面を。
いくらなんでもそれは
ネガティブすぎるでしょ!
と思わずツッコミたくなるけれど
ハリネズミは真剣そのもの。
自分のハリの威力に
誇りを持ちながらも、
ハリがどうぶつたちに
怖れられているんじゃないかと
嫌悪感も抱いている。
孤独で、人恋しいのに
臆病で、気難しくて、
なかなか一歩が踏み出せない。
どんな人の中にも
ハリネズミはいるなあ。
そう思うと
ハリネズミの妄想が愛おしい。
■『ハリネズミの願い』
トーン・テレヘン 著、長山さき 訳(新潮社)
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