『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』米原万里
本ときどき映画
ロシア語通訳だった米原万里さんは
1960年〜1964年、
9歳〜14歳の5年間を
チェコスロバキアのプラハにある
ソビエト学校に通った。
1968年の「プラハの春」、
1989年から始まる共産主義の崩壊、
1991年に勃発して泥沼化する
ユーゴスラビアの内戦。
社会主義諸国が激変するなか
少女時代の友人は無事なのだろうか?
と、彼女たちの安否を訪ねて
1996年に東欧をめぐった顛末が
3編のエッセイにまとめられている。
国も文化もまったく違う
バックグラウンドを持つ友人たちに
敬意を払い、理解しようとつとめる
米原さんの心の動きが伝わってくる。
誠実な人なのだなあと思う。
1989年といえば
テレビの報道に釘づけだった。
天安門事件、ルーマニア革命、
ベルリンの壁の崩壊、
ペレストロイカの失速。
オセロが裏返るみたいに
世界が変わっていくのを
目の当たりにした。
でも、ニュース映像は
ニュース映像にしか過ぎない。
当事者だったひとりひとりの
かけがえのない人生を、
米原さんの視点を通して
少しでも知ることができてよかった。
■『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
米原万里 著(角川文庫)
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