『民族衣装を着なかったアイヌ』瀧口夕美
本ときどき映画
資料探しをしていて、図書館で見つけた本。
著者は1971年生まれの、アイヌの血を引く女性。
平たく言えば、自身のアイデンティティを探るために
(薄っぺらい表現ですみません)
母親をはじめ、大正末期〜昭和初期生まれの
アイヌの人たちの話をまとめた聞き書きだ。
北海道の開拓とともに、アイヌは土地を奪われ、
生活の糧である漁業や狩猟だけでなく
それまでの習慣や風習も禁止され、
日本語の使用が義務づけられた。
“和人”のやり方、野蛮すぎ!
と、どんよりした気分になるけれど、
本書に登場するアイヌの人たちの話からは
激動する現実に向き合ってきた
ひとりひとりのリアルな姿が伝わってくる。
笑ってしまうエピソードもあるし、
すごすぎて笑えないエピソードもある。
あとがきにはこうある。
「少数民族というカテゴリーで見れば、
被抑圧者という受け身の存在かもしれないが、
誰にだって、生活者としての主体的なものの見方もある。
そういう多重性のもとで、
個人の歴史というのは紡がれているのではないか」
この本のよさをうまく説明できないので
ぜひ読んでみてください。
文章もとてもいいです。
残念ながら書店やAmazonでは買えず
版元の直販のみ。
■『民族衣装を着なかったアイヌ』
瀧口夕美 著(編集グループSURE)
この記事へのコメントはありません。