濃すぎるイベント「火焔×五輪」

縄文研究の第一人者、小林達雄先生が
お話しされるイベントを見つけたので、
昨日、津田塾大学の千駄ヶ谷キャンパスへ
ふらっと行ってきた。

 

イベントのタイトルは「火焔×五輪」。
渡されたパンフレットによると
副題に「2020年東京オリンピック・
パラリンピックに向けて縄文文化発信」とある。
なんのこっちゃ??

 

エントランスでは6体の土器が
ガラスケースに展示されていた。
おお本物! かっこいい!

これは吉野屋遺跡(三条市)の火焔型土器。

 

イベントを主催する信濃川火焔街道連携協議会は
火焔型土器を聖火台にとアピール中で、
共催の津田塾大学は、千駄ヶ谷キャンパスが
東京オリパラのメイン会場に
いちばん近いキャンパスということで
学生によるプロジェクトが進行しているらしい。

火焔と五輪、なるほど。

 

それはさておき、大教室で開かれた
4時間にわたるイベントは内容が濃く、
面白くて席も立たずに聴き入った。

学生プロジェクト「梅五輪」のプレゼン、
小林達雄さんと土井善晴さんのトークショー、
チェロ奏者の斎藤孝太郎さんによるライブ、
津南町長と遺跡発掘のプロフェッショナルの
女性3名による「地域資源としての縄文」鼎談。

 

とくに感動したのがライブで、
縄文土器や土偶の文様を
五線紙に置き換えてチェロで演奏…
と、言葉ではぜんぜん伝わらないけれど
まあ素晴らしいライブだった。
ぜひCD化してほしい。

 

キッチン・コンフィデンシャル/アンソニー・ボーデイン

先日、たわいないおしゃべりの途中で
アンソニー・ボーデインの名前が出た。
…誰だっけ?

「ほら、昨年、自殺しちゃったシェフ」
と言われて思い出した。
『キッチン・コンフィデンシャル』の人か。
で、読んでみたら面白いーー。

アンソニー・ボーデインは
ニューヨークのブラッスリー「レアール」の
エグゼクティブ・シェフだった2000年、
レストラン業界の内幕を描いた本書が
大ヒットして有名人になった。

若い頃は酒浸りで、ドラッグ中毒。
破天荒な日々を送りながら、
一流のシェフになるために
一流のシェフであり続けるために
苦悩し、もがき続けた。

スピード感あふれる文体から、
ロックで知的で
チャーミングな人柄が伝わってくる。
けれど、亡くなったときの報道によると
晩年は鬱病に悩まされていたという。


本書の巻末には
シェフになりたい若者への
アドバイスが添えられている。
全14項目の1番目は「全身全霊を捧げよ」。
真摯な料理人だったのだなあ。

あなたを選んでくれるもの/ミランダ・ジュライ

映画監督で脚本家の著者は
次回作の脚本執筆でスランプに陥っていた。
そこで、現実逃避に
『ペニーセイバー』の広告主への
インタビューを思いつく。

毎週火曜に届く『ペニーセイバー』は
売買広告のフリーペーパーだ。
2009年、10ドルの革ジャンを売りたい
性転換中の男性からインタビューは始まる。

写真が多いし、軽く読めそうだし、
なんてことない、市井の人々への
インタビュー集かと思ったら、違った。

『ペニーセイバー』の広告主は
著者がふつうに暮らしていたら
交流しないであろう種類の人たちだった。
多くはパソコンを持っていない。
もちろん楽しい出会いばかりではない。

著者はそのような人たちを
理解し、受け入れようと苦しみ、
インタビューは次第に重みを増していく。
同時に、逃避していた映画の脚本も
少しずつ展開していくのだ。

これがSNSだったら
たちまち炎上してしまうだろう。
書籍であっても批判は多いに違いない。

でも、創作の過程では時に
どうしようもなく追い詰められ、
追い詰められてはじめて
壊さなければならない壁が
目の間に立ちはだかっていることに
気づくのではないか。

と、現実逃避に読んだ私は
つらつらとそんなことを考えた。
岸本佐知子さんの訳もとてもよいです。